ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

クズリ ある殺し屋の伝説 柴田哲孝 講談社文庫(おススメです)

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面白~い!おススメで~す!

正統派なミステリーというより、しっぶ~いハードボイルドですけど、本の帯に「大藪春彦賞作家の最高傑作ミステリ!」とあるので、カテゴリーはミステリーにしておきます。ハロウィンで賑わう六本木で外国人が射殺された。使用されたのは四半世紀以上前に死んだと思われている「クズリ」と呼ばれる殺し屋が使用していた銃。という場面から話は始まります。「クズリ」は生きているのか? 「クズリ」でなければ誰が銃を使ったのか? この謎がミステリーかもしれませんが、この謎の答は読者にはすぐにわかってしまいます。途中からは現「クズリ」の生い立ちや日本での潜伏生活が描かれ、そしてラストは(よっ!待ってました!)「クズリ」と、彼を付け狙う中国人殺し屋チーム、そして警察庁の鼻つまみ刑事の壮絶な対決シーンになります。「クズリ」がどうして殺し屋になったのか、生い立ちから解明しようとしているのですが、読んだ感想としては、ちょっと納得できない無理やり感がありますが、そんなことはどうでもよくて、生きている「クズリ」の人間臭さの描写にぐいぐい引き込まれてしまいました。「クズリ」の母親について枚数を割いて調べていく過程が描かれているので、母親の人生が「クズリ」が殺し屋になった理由に関係しているともっとどきどきしたと思います。

映画化しませんか?

映画化して欲しいな~。高倉健さんに「ゴルゴ13」なんてポピュラーな殺し屋を演じさせないで、「クズリ」を演ってほしかったな~。国籍不明っぽいところや、ストイックなところは高倉健さんにぴったりはまりそうですけどね。それほど、「カッコイイ」「男が惚れる」殺し屋です。

もう一つ、注文を付ければ、エンディングに向かって、「クズリ」の周囲にいろいろ動きがあるのですが、結末が書かれずに終わっているのです。あれはどうなったのだろう?そういえばあいつは無事なのか? なんであの人がこんなところで・・?という事がいくつか存在するのですが、でも大きな話の流れの前には、「忘れろ!」と言われて素直に「わかりました!」って答えるしかないくらい、圧倒的に、でも意外ではない、面白い結末でした。

細かいところはどうでもいい。とにかく面白いハードボイルド!

柴田さんってあの「TENGU」を書いた作家さんなんですね。この「スグリ」を読んだ後、まだ未読でしたら「TENGU」を読むことをおススメします。(「TENGU」で大藪春彦賞を受賞された)こちらもスリリングで読者を飽きさせない作品でした。