ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

2017年下期 このミステリーがオススメ! 独特の世界観が楽しめる超おススメ!5冊

8月から50冊近くのミステリーっぽい文庫本を読んできました。当たりもハズレもありました。しかしここで紹介する5冊は、この半年の大当たり!です。どの作品もオリジナリティたっぷりで、この作品でしか味わえない独特の世界を持っています。

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兄弟愛の物語!思いがけない結末!絶対おススメ!「幻夏」

 太田愛さんの作品を始めて読みました。切ない家族の話だというのはタイトルや本の帯でなんとなく伝わってきました。しかし、こんなに意表をつく展開が待っているとは思いもよりませんでした。尚と拓。この作品の中心は2人の兄弟です。23年前の夏の日の出来事が現在の事件を解く大きな鍵となっています。その夏の日に何が起きたのか? その日に失踪してしまった兄はどこで何をしているのか? 読む人全てに「家族愛」について考えさせる1冊です。

異形、異能の一族、これも「家族愛」の物語。「冥の水底 朱川湊人」

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この作品も家族愛が根底に流れている作品です。東北にある一族は、その異形と異能ゆえに一般社会とは交わりを避けひっそりと暮らしていました。しかし一族の若者が普通の町の少女に恋をしてしまいます。決して叶わない恋。決して投函されることのない恋文を書き続けて数十年。恋の相手は重罪を犯してしまいます。彼女の出所を待つ若者。その若者の気持ちを守るために危険を冒して東京で暮らし、若者をサポートする仲間たち。現在に起きた失踪事件の謎を解きながら、主人公の純愛とその仲間たちの家族愛にひたれる一冊でした。上下巻を一気読みできる年末年始におススメです。

誰のために生きるのか? 伝説の殺し屋「クズリ」の正体は? 

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一人の殺し屋の物語です。殺し屋が主人公となれば、困難な殺人の依頼を受けて、超人的な技術でとても不可能に思われたミッションを成し遂げるというのが定番ストーリー。しかしこの作品はミッションに関するストーリーは一部分で殺し屋のプライベートに焦点をあてた作品です。普通に思い描く殺し屋像は、高い報酬を得ていてプライベートは謎、しかし贅沢三昧な生活をしているらしい・・ことが多いのですが、(プ~トロはゴルゴ13に影響されてますね。笑)この作品の主人公「クズリ」は外国貨物船に乗って来日し、横浜中華街の屋根裏部屋で暮らし、中華食堂で働くバツイチ女性と恋に落ちるという、地味な生活を送ります。その屋根裏部屋は父親も住んでいた場所、クズリは父と同じ場所で暮らし、父の使った拳銃を使い、父と同じ名前で呼ばれて殺人の依頼を受けるのです。結局、現・クズリの生い立ちは最後まで明らかになりません。恋に落ちた相手も殺されてしまいます。しかし主人公は依頼された仕事をこなし、敵対するグループを壊滅し、自身も傷ついて去っていくのです。彼はどこへ行こうとしているのか?主人公が父親と同じ職業を選んだ理由は?母親とどんな会話を交わしていたのか?どんな訓練を受けて殺し屋になったのか?日本に来るまでどこでどんな仕事をしていたのか?そしてこれからどんな人生を送るのか?疑問は何も解決されないまま、クズリという人間に強烈に魅力を感じてしまった一冊です。

本格ミステリーもいいですね。「鍵の掛かった男」

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警察関係者が主人公ではないミステリーものも多数読んできました。印象に残っているのは森博嗣さんの犀川&萌絵シリーズ(S&Mシリーズ)、瀬在丸紅子&保呂草シリーズ(Vシリーズ)、東野圭吾さんのガリレオシリーズ 他にも多数ありますが、ライトノベルっぽいものが多く、読んでいてあまり入り込めないので、多少、避けていたことを自覚しています。実は、有栖川有栖さんもペンネームから受ける印象がライト感満載で、本屋でみても避けていました。今回、ついに買ってしまったのですが、結果的には大当たり!チャラチャラした雰囲気がなく、キチンと推理し、本格ミステリーの定番「読者への挑戦」もしっかり入っているではありませんか。

本格ミステリーファンにはいまさらな作品だと思いますが、素人探偵ものは軽すぎてちょっとな~と喰わず嫌いの方、一度お読みになることをおススメします。世界が変わりますよ~。

クランと神の闘いは一体どこまで拡大するのか!?「クランⅤ 警視庁渋谷南署巡査 足ヶ瀬直助の覚醒」 

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警察を舞台にしたシリーズものは好きで沢山読んでます。堂場瞬一さんのシリーズも完読してい(るはず)ます。姫川玲子さんも雪平夏美さんも藤堂比奈子さんも大ファンです。その中でこの「クラン」シリーズには別格の面白さを感じています。他のシリーズは、警察側が危機に陥ることはほぼ無く、圧倒的な権力で捜査をすすめ真犯人に迫っていくストーリーが多いのですが、この「クラン」は警察組織VS警察グループの闘いで、主人公側(クラン側)が常に追い詰められている状況でストーリーが展開していくのです。「クラン」が劣勢にたつと誰かが起死回生の一手を放つ。この繰り返しなのですが、わかっていてもハラハラドキドキさせられる作品です。さらに、未だに敵(警察閥)の全貌がわからない。誰が味方で敵なのかわからない。裏切りと逆転の連続が飽きさせない理由なんでしょうね。とにかく、「クラン」は続編が出るのが待ち遠しい1冊です。足ヶ瀬直助くんは、この「V」では覚醒してないので、「Ⅵ」で覚醒してどんなスーパーヒーローになるのか、楽しみでしょうがありません。

 

次回は、男のハードボイルドタッチのミステリー のおススメ4冊です。