ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

ハケタカ2.5 ハーディ(上)(下)  真山仁 講談社文庫

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 ハゲタカシリーズはスパイアクション小説だったのか?

ハゲタカシリーズが007になっちゃいました。緊迫感ある買収をめぐる駆け引き、裏で暗躍する敵、突然現れる救世主、タフなネゴシエーションの連続、これが「ハゲタカ」シリーズの魅力だと思っていたですが、この「ハゲタカ2.5」では、中国人が暗躍する地球規模のスパイアクション小説になってちょっとガッカリです。主役のゴールデンイーグルはどこを飛んでいるのか?

日光ミカドホテルに泊まりたい!

物語は雪の戦場ヶ原で始まり夏の日光湯川で終わります。主役である日光ミカドホテルは誰かに支えられないと生きていけない、か弱い貴婦人のように思えます。世界有数のクラシックホテルで流れるゆったりとして贅沢な時間を味わいたくなりました。ところが、香港・パリのパートは単なる力任せのドンバチ・アクションです。最初からの「ハゲタカ」ファンには物足りないのではないかと心配になります。
「ハゲタカ」の魅力は鷲津のキャラにあると思います。冷酷に経済原理だけで行動し、金の力で相手を破滅させる鷲津ですが、彼の中に垣間見える人情味がいいんですよね~。しかし、この作品では誰が味方で誰が敵なのかわからない入り組んだ人間関係になっていますし、ある登場人物がなぜ自分の破滅と引き換えにヒロインに全てを与えたのか?も納得しかねます。これまでの「ハゲタカ」シリーズとは違う読後感が残ってしまいました。

「ハゲタカ2.5」の「0.5」の意味。

この「0.5」にはどんな意味があるのでしょうか? 
①真山仁さんが、これまでの金融バトルものとは違う読者層を取り込むため違うテイストのシリーズにしたかったので「0.5」だけ加えた。
②正統「ハゲタカ」の主人公 鷲津は、このストーリーと同時進行で別の案件を仕込んでいて、「3.0」はその案件が舞台になる。
③ハリウッド映画の原作を狙って、これまでとは全然違う世界観にするために「0.5」にした。
さあ、どれでしょう? 笑 ハゲタカファンとしては②を期待します。

ハゲタカファンには物足りないでしょうが・・・まったく違うシリーズだと思えば面白く、次も期待してしまう一冊です。

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