ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

雨に泣いてる  真山仁  幻冬舎文庫

 

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リアリティがあってとても面白い作品です。

いや~面白い作品でした。ストーリーが小気味よく展開し、先を予測させてくれません。主人公に次々にふりかかる難題。上の顔色ばかり気にする上司、自分のポイントを稼ぐことしか考えていない先輩、そして最大の難題は社主の孫娘のワガママ・・・ではなく自分自身の過去との闘いなんでしょうね。著者略歴に新聞記者とありましたが、作品中に登場するタイプの違う上司像や社主像はいかにも新聞社にいそうで、言動にリアリティがある・・もしかして真山さんの新聞記者時代に本当にいた人たちをモデルにしたのか?と思えてしまいます。まあ、様々に活躍するキャラクターが作品に深みを与えていると言っていいでしょう。それにしても社主の孫娘の強力な自己主張と勘違いのしつこさは、ひょっとしたら真山さんの実体験の意趣返し?と思ってしまいました。

災害現場の取材記者たちの行動、被災者たちの言動など非常によく書かれています。真山さんは東北大地震のときは既に作家になられていたので、実体験に基づくものではないのでしょうが、面白かったです。

予想もしない展開にあ然!

そして、最後のどんでん返しには驚きました。あんな事が起きたら自分だったら堪えられません。しかしそこでも新聞記者としての本分に拘ってしまう。その葛藤もまた真山さんが描きたかったことなのでは?と思います。あの結末からさらにどんでん返しで劇的な逆転大スクープで終わると池井戸さんモノになってしまいますね。そういう終わり方も決して嫌いじゃない自分がちょっと恥ずかしい・・・
真山さんは珍しく一人称で書いた小説とのことですが、読んでいてと堂場俊一さんの文章と似ていると感じたのですが、皆さんはいかがですか?同じ元新聞記者だから・・?

おススメミステリーです。個人的には、今後の松本真希子の変身を読んでみたい!

最後に、作品を通して憎まれ役の社主の孫娘「松本真希子」は、相当な勘違い自己主張で主人公を困らせたり怒らせたりしていますが、次回作では何かのきっかけで、主人公「大嶽」に心酔するようになる・・って続編を書く予定はないものでしょうか・・。笑「大嶽」のピンチを助けるキーパーソンになったら面白いだろうな・・でも作風が違ってきちゃいそう・・プ~タロウの妄想でした。