ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

時限捜査 堂場瞬一 集英社文庫

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この「・・捜査」シリーズの端緒となった「検証捜査」は、読んだ当時、いきなり島流しの刑事から始まったのでアレ?と思ったことを記憶しています。この時に集められたチームのメンバーを順に主人公にしてシリーズ化され「複合捜査」「共犯捜査」そしてこの「時限捜査」と続きます。シリーズが進むにつれ神谷のブチ切れキャラが大人しくなっているような気がしますが・・いかがでしょう?確か「検証捜査」ではあまり登場してこなかった島村さんがこんなにナイスな大阪人キャラだとは思いませんでした。いい感じで力が抜けていて素敵な58歳ですね。プ~トロと年齢が近いので余計に親近感がもてるのかもしれません。

この作品は、異動前日の島村署長、射撃の大会に出発する前日の下倉、と2人のタイムリミットをうまく絡ませながらストーリーに緊張感をもたせています。射撃の選手という下倉の登場で、最後は下倉の狙撃が登場することは確実に予測できるのですが、まさか高所恐怖症だったとは・・意外な演出で少しハラハラさせてもらいました。

大阪の人質立て籠もり事件の解決に、東京の神谷が絡んできます。神谷が登場してきたところで、事件の全体像は大体見当がついてくるんですが、それでも読者をひっぱり続ける力が落ちないのは、登場人物の背景・キャラがよくできているからなんでしょうね。プ~トロが堂場作品のファンなのは事件そもものの面白さより登場人物が作り出す世界観が面白いからなんだと思います。

ところで、物足りないところ・・ドローンによる発火事件、人質立て籠もり事件、第三の事件の先に、もう一つ何か大きな事件を期待していたのですが、少し肩透かしを食った感があります。きっかけとなった発火事件も犯人や手口は具体的には描かれておらず、アレ?という印象です。まあメインの人質立て籠もり事件が予定調和に解決していくさまがキチンと描かれているのでよしとしましょう。

堂場作品としては物足りません シリーズ次作は凛が主人公?に期待!

この「・・捜査」シリーズの一番の注目キャラ、北海道警の保井凛がまだ主人公になっていません。神谷と凛の関係も気になるところです。次回作は北海道に全員集合で凛が主人公で、神谷と大ゲンカをしながら神谷大活躍!になることを期待しています。