ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

不愉快犯 木内一裕 講談社文庫

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マンガ「ビーバップハイスクール」のきうちかずひろ先生が小説を書いているとは知りませんでした。読み終わった今も、いまだにあのマンガとこの「不愉快犯」が結びつきません。

完全犯罪です。完全犯罪を企てた男の物語です。よくある完全犯罪モノは、アリバイとか密室とか物理的な理由で完全犯罪を構成するのですが、この男は刑事訴訟法の原則を利用して警察を手玉にとり完全犯罪を達成しようとしました。あと一歩でした。完全犯罪が成立してしまうと物語自体が成立しなくなる・・・のでしょうか? 完全犯罪が成立する作品を好む読者って少数なんでしょうか?ここまでよく考えられているなら、いっそ完全犯罪を成立させたら面白かったのでは?と思います。しかし、完全犯罪のノウハウ本になってしまうので社会的には許されない出版物なのかもしれません。まあ、その辺はあまり深く考えないで・・

完全犯罪が成立する!?・・・

完全犯罪を目指す男と、闘う警察官。惜しいのは、警察サイドの登場人物のキャラクター描写が少し弱いというところです。警視庁の、しかも所轄の刑事2人が奮闘する話なのですから、この2人をヒロシとトオルのように愛されるキャラに描いて欲しかった。周囲にはキャラが立ちそうな登場人物が何人もいたのですから、少し寄り道してでも人物キャラが立つエピソードやサイドストーリー、伏線を膨らませて、読者を迷わせ楽しませて欲しかったです。しかし完全犯罪を目論んで何重もの策略をはりめぐす悪の主人公(名前は書きませんが、読み始めればすぐわかります)、はりめぐされた策略の綻びを探し、つき崩そうとする所轄の刑事2人の頭脳の闘いはハラハラしながら読めました。完全犯罪を目論む男の手の内を探りながら、真犯人を追い詰めていく過程は、ミステリーとして十分楽しめるものでした。

刑事訴訟法がこんなに出てくるミステリーって新しい?

刑事訴訟法を駆使し、検察と裁判所を手玉にとる完全犯罪モノって新しいのかもしれませんね。