ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

県警猟奇犯罪アドバイザー・久井重吾 長崎尚志 パイルドライバー kindle

読んだ記憶がない作家さんでしたが、「猟奇犯罪アドバイザー」って何?と気になってkindleで購入してみました。

これは!大当り!

作家名で検索すると、漫画界でご活躍されている方のようです。しかも「醍醐真司の博覧推理ファイル」の作者!読んでました。 「醍醐真司シリーズ」では少し感じた違和感がより少なく、最初から最後まで一気読み!これはおもしろい!大当りを引き当てた気持ちです。

初版が10月で世に出たばかり!しかも、長崎さんは自分と同じ年齢じゃありませんか。

ついでに久井重吾も同じ年齢っぽいゾ?なんとなく身につまされるエピソードもあり、遠慮がちなのに、実は「オレのやることが絶対に正しい!」自信たっぷりのセリフとかプ~トロの実生活を思い浮かべて「それ、あるある~」で楽しませてもらいました。

とにかく、久井重吾のキャラクターがいいですね。同世代ということもあるのか、すっと入ってしましました。

ストーリーは、15年前の未解決事件と同じ手口の一家3人惨殺事件を捜査していくのですが、パイルドライバー久井元刑事は、現在起きた事件も、15年前の事件も、その真相を暴いてしまうのです。とても意外な真相なのですが、違和感を感じさせないで最後まで読ませてくれます。この辺はマンガ業界の実力者ならではの構成力ですね。さすがです。

相棒の中戸川刑事も警察を辞めないようだし、シリーズ化を期待し、続編が早くよみたくなる作品です。

おすすめですよん。

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十字の記憶 堂場瞬一 kindle おススメです。

関東の地方都市の高校の同級生二人が主人公。一人は地方新聞の支局長。もう一人は殺人事件の捜査本部に入った県警捜査一課の警部補。2人は同じ高校の陸上部の仲間だった。2人は同じ陸上部の仲間が街を出ていく現場に出くわしたが、止めることができなかったという苦い思い出を抱えていた。

ストーリーはこの2人を中心に展開していくのだが、堂場作品が読みやすく飽きないのは、状況の描写と主人公たちの内面がリアルに感じられ、経験者でしかわからないディテールまで表現されえいるから。そしてストーリーの舞台がになるのが適度な地方都市が多く、プ~トロの実体験と重なる部分が多いので登場人物たちの動きが鮮やかに思い描けるから。だと思っています。

この作品が堂場さんの96作目ですが、そのうち何冊読んだんでしょう。おそらく2/3は読んでいますが、さすがに飽きてくるのではと思うのですが、「堂場瞬一」の文字をkindle上でも探してしまうのは…やっぱり面白いからなんでしょう。

この作品では現在の事件と20年前の青春の記憶、そして20年前の「事件にならなかった」事件の解明が同時進行していきます。

堂場作品には猟奇的な事件は出てきません。現実にありそうな事件ばかりです。登場人物も実際にいそうな人物ばかり。ぶっ飛んだキャラクターはいません。

きっと堂場さんが自分の、実際に経験したり、ちょっと想像したりした事柄で組み立てているからなのでしょう。読んでいると堂場さんがどんな少年だったのか、どんな仕事をしていたのか、勝手に頭の中で堂場瞬一像が出来上がっていくようです。

ちょっと意地悪く想像してしまうと、青春時代、記者時代、堂場さんが憧れていた?知人・友人たちの世界を描いているのかもしれません。

この作品でも、20年前に街を出ていくのを止められなかった友人を、職務を異逸脱してまでも夜通し説得し、20年前には口にできなかった言葉で包むくだりがありますが、胃読んでいてうらやましくもあり、自分の青春を思い出させてもくれ、とても素敵な場面に思えました。

だから堂場作品の愛読者であることを辞められません。

 

「波動」 烈渦 朽海の城 新東京水上警察シリーズ 吉川英梨   高潮のシーンが衝撃! kindle

つい先日、「海中の道化師」を読みました。面白かったので過去のシリーズを探し「朽海の城」→「波動」→「烈渦」 と一気に読んで、もっと!と探したところ、いまはここまで! でした。

残念!

もとと読みたい!有馬礼子さんの凛々しいサムライ魂をもっと読みたい!と思っても次回作に期待するしかありません。

吉川英梨さんのすごいところ、ミステリーの本筋以外にちゃんと見せ場を作っているところ。正直いって、「烈渦」の日下部刑事とエスポワール扇橋の住人とのくだりは、感動ですね。特に若い夫婦が生まれたばかりの赤ちゃんに付ける名前!じ~んときちゃって不覚にも電車の中で涙を零しそうになりました。

そしさらにすごいのは、

本日、日本中の関心を集めているであろう

「高潮」の凄まじさのリアルさ!

吉川さんは「高潮」の怖さをリアルに描いています。ストーリーの中では4階建のビルが高潮に飲み込まれそうになります。現実の世界でも起きる可能性のある脅威のようです。今日もフジテレビの緊急特番で、関空が水没した高潮は特異な例ではなく、発表されているハザードマップでも東京・江東区の川沿いの地域では 最大10mの高潮が発生する危険性が指摘されていると言っていました。まさに 日下部刑事は東京・江東区で台風による巨大な高潮と格闘し危機一髪だったりするのです。読んでいてもハラハラするような恐怖です。実際に直面した人はどんなにか恐怖でしょう。人間の無力さを感じるしかないのでしょう。

タイムリーにこの本を読んだわけですが、高潮の怖さをしっかり認識しました。

津波も怖いが高潮も同じくらい怖い!

ま、高潮以上に、碇刑事と礼子の今後にも目が離せません。碇さん羨ましいな~。笑

 

 

影の守護神 警視庁犯罪被害者支援課5 堂場瞬一

ガチガチの堂場ファンです。刑事鳴沢了シリーズから読み始め、堂場作品の警察ものシリーズはほぼ読破しています。しかし、この「影の守護神」はいつものダイナミックな展開はどこかへ行ってしまったようでした。展開が予想の範囲から飛び出してくれないのです。交番の警察官を撃った銃が、5年前の交番襲撃事件で奪われたものだった…という導入はよかったのですが、殺された警察官の息子の暴走、妻の落ち着いた態度、もっと裏に何かが隠れていて後半にどっか~んと展開すると期待していたのに、しなかったのです。いや、息子の暴走を操っていたのは意外な人物でした。妻も最初は証言しなかった亡夫の秘密を抱えていました。でも、どうも物足りないのです。

とは言え、連続したシリーズもので1冊読まないと続くシリーズが理解しづらくなる。いや、他のシリーズのストーリーにも影響してくるので、どうしても読まなくてはいけません。読んでみればそれなりに面白い、だから堂場ファンはやめられないのです。

根拠のない憶測ですが、失踪課シリーズ、追跡捜査係シリーズ、アナザーフェイス、一之瀬拓真シリーズ、それぞれが終了に向かって進んでいるように感じています。もしかしたら各シリーズの主人公たちが、捜査一課のナンタラ係に集結して巨悪に立ち向かうシリーズ合同完結編みたいな作品が登場するのも遠くないかもしれません。ひそかに期待しています。

 

海底の道化師 新東京水上警察 吉川英梨

以前は書店でフラフラしながら、表紙のインパクトや帯のキャッチで本を選ぶことが多く、そうして選んだ中に「これ!」という1冊に出会ったときはすごく得した気分になれたものです。最近目の病気が原因でkindle派になってからは、書店での一目ぼれの出会いがなくて少し寂しい気分です。

この「海底の道化師」は書店で横目で見て気になっていたタイトルが、kindleの「おすすめ書品」に出てきたので、購入してみました。

大当たり~~~!!!

高嶺東子がかっこいい~~! このシリーズの主人公は碇拓真刑事、サブが有馬礼子刑事だと思うのですが、この2人以外のすべての登場人物を喰いまくってしまいます。

登場シーンがいい! 実は登場前に 有馬礼子がしごかれている「電柱」と呼ばれる女隊員が会話に出てくるのですが、あの「電柱」がこんなにかっこいいとは…!衝撃の登場でした。

そして本筋に関係ないんですが、男女関係も複雑で笑えます。事件解決後の飲み会での衝撃の真実は…大笑いです。

話の中にも出てくるのですが、日本の近海の警備に携わっている組織は多いですね。

海保、(湾岸署のような海のそばの)警察署、機動隊の水難救助隊、海技職員、そして自衛隊、この複雑な組織同志の意識の違いもこのタイトルで知ることができます。

「海猿」「踊る…」も面白かったのですが、お台場のテレビ局さん、このさん新東京水上警察シリーズをドラマ化されてはいかがでしょうか? 

お色気もあるし、アクションもたっぷりだし、最近、警察ドラマ全盛でしょう?

このシリーズは面白いですよ~。

 

 

検事が主人公 2冊「検察側の罪人」 「検事の本懐」kindle

最近たまたま検察官を主人公にしたミステリーを2冊読みました。

(kindleなので2「冊」は変?)

「検察側の罪人」は雫井脩介さん 「検事の本懐」は柚月裕子さん とどちらもなかなかのストーリーテラーなだけあって、飽きさせず一気読みできました。

悪い事をしない限り、普通の人にはあまり馴染みのない「検察」ですが、自分自身は 親戚に検察官がいたこともあり、以前一度だけ検察官に話を聞かれたこともあって、(そのときは大きな事件だったので、「検事の本懐」のように地方から応援にきた検察官が相手だったと記憶してきます。)検察び内部をリアルに想像しながら読むことができました。

内容はというと、「検察側の罪人」はちょっと近寄りたくない検察官が登場してきます。もちろんフィクションですが、雫井さんの筆力もあってこんなことが現実にあっても不思議じゃなく思えてきます。あ~、ちょっと日本の検察・警察が信用できなくなってきました。

「検事の本懐」は5つのショートストーリーから構成されています。1話から読みすすんでいくうちに、主人公佐方貞人検事の真実が徐々の見えてきて、最後の「本懐を知る」で佐方検事と父との物語があきらかになります。この家族の歴史があって佐方検事が誕生したのだと納得させられました。

2冊とも「冤罪」が重要なテーマになっており、罪人の罪の重さを正しく判断するのは難しく重要なことだと思い知らされました。(あたり前ですが…)

やってもいない容疑で取り調べられるなら、佐方検事がいいな~。

 

 

 

 

最後の証人 柚月裕子 kindle

巻末の解説が今野敏さん、ということで今野さんファンにとっては、今野さんが評価する女性作家ということでも興味がわきそうな一冊です。

物語は法廷もので、湯月さんが大藪賞の受賞前、まだそんなに有名でなかった頃に発表された一冊です。

壮絶な家族愛の物語

法廷ものと言えば、状況は完全にクロの容疑者をどう弁護していくのか、が見どころなのですが、この一冊は、実はとても壮絶な家族愛の物語として読んでしまいました。母親は愛する息子のためにここまでできるものなのか、そして夫(父親)になげかける言葉「私たちは同志よ」にとても心を動かされていまいます。愛する夫(確かに夫をとても愛していた妻でした)に向かって「人間の絆で一番強いものは何か、って聞かれたら同志って答えるわ。恋愛感情や友情より同じ目的を持つ同志の絆が一番強いと思う」って語りかける妻の言葉に、どうしようもなく感動してしまいます。

以前に読んだ「孤狼の血」も壮絶な物語でしたが、この最後の証人もまた壮絶です。

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ネタバレになるので、詳しくは書けないのですが、家族愛とともに、柚月さんは読者に対してある仕掛けをしています。読者は柚月さんの思惑にず~っとはまって、この物語の本当の姿をず~っと誤解しながら読み進むはめになります。

そして後半で暴かれる真実!見事などんでん返し!

家族愛に感動した涙目で、思わずチクショ~って叫んでいました!笑