ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

ゴールデン・ブラッド 内藤了 幻冬舎文庫

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藤堂比奈子シリーズの内藤了先生です。

 猟奇犯罪捜査班とはまた一味違ったミステリーで楽しまめました。主人公は下町風商店街に住む若い消防士の向井圭吾。余談ですが、下町風の人情溢れる近所の人たちはいいですね~。昔住んでいた高円寺商店街を思い出しました。キップのいいおかみさんに頭のあがらないご主人とか、美味い焼き鳥屋とか出てきて、実在するなら住んでみたくなる街でした。

大あらすじは、マラソン大会で起きた爆弾事件をきっかけに、圭吾が妹の死の真相と、その裏にあった、製薬業界の陰謀を突き止めていくというもの。

ちょっと弱いのは、製薬会社の陰謀を徹底的に悪い「悪」にしなかったことだと感じました。執筆前に血液関係の学会に参加させてもらって貴重な情報を教えてもらって内藤さんの構想が変わったんでしょうか? 悪に対峙する主人公という構図の作品が読みやすいのですが、立場の違う「悪」が何人もでてきて、読み手の理解が微妙にずらされてしまいます。 帯の「65万部突破」は「藤堂比奈子」シリーズを修飾する言葉で、この作品を修飾しているわけではありません。

わかりやすい悪人を逮捕してくださ~い!誰が本当の悪人かわかりませ~ん。

結末の犯人捜しも、微妙にずらされて、思わず「そんな小物じゃ面白くな~い」と胸中でつぶやいてしまいました。

それでも、ほっこりできるお楽しみもあります。主人公と妹の関係性は意外でした。でももう少し伏線やエピソードがあればもっと楽しめたのに…と残念です。

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