ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 原田マハ 集英社新書

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観る人を変える世界の名画26点

「あなたは、誰かの大切な人」の原田マハさんの本業(?)の作品です。いまや、絵画がテーマになっていなくても新作は真っ先に買って読みたくなる作家さんの一人ですが、この一冊ではひさしぶりに原田さんの本業の世界で楽しませてもらいました。

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と言ってもこの本はフィクションではなく、実用書のジャンルですが、この一冊で取り上げられているエピソードはどれもフィクションを超える素敵な物語です。

絵画好きでなくてもおススメしたい一冊

この本で取り上げられている名画は26枚。タイトル通りどれも死ぬまでに一度は現物を観る価値のある作品ばかりだし、現物を見ながらこの1冊の中に紹介されているエピソードを思い出すと、感動はより膨らむでしょう。

この26作品の中で、プ~タロウがこの60年間で観た(可能性のある)のは6作品。とても恥ずかしいことですが、明確に記憶に残っているのは2作品しかありません。この本の中のエピソードを知って観たならばそれぞれが明確に記憶に残っていたのでしょうが…大変お恥ずかしい話です。絵画にまつわるエピソード以外にも、画家の人生、絵画の辿った数奇な運命もまた、名画を観たときの印象をより強くしてくれるに違いありません。

印象に残ったエピソード

この本で取り上げられているエピソードはどれも原田さんのフィクションを彷彿させる「心が癒される」話ばかり。特に強く印象に残っているのは「プリマヴェーラ(春)」「最後の晩餐」「セザンヌ夫人」「エトワール」「真珠の耳飾りの少女」「テワナ衣装の自画像、あるいは私の考えの中のディエゴ、あるいはディエゴへの思い」「道」沢山ありますね。この中でも「エトワール」のエピソードは強烈でした。今後はこの絵を観る気持ちが変わることでしょう。

作品に関するエピソード以外にも、原田さんが名画を観たときの感動、印象の描写が巧みで、強く心に残るものが沢山ありました。原田さんと同じ感覚になれるわけではありませんが、原田さんの感覚の十分の一でも共感できればすばらしいことですね。

生きているうちに、いっかいは行きたくなる美術館ガイドです。あの絵もこの絵も全部観たい!

この本をおススメしたいもう一つの特徴は、この本は「生きているうちに行くべき世界の美術館」のガイドブックでもあるということです。この本に登場してくるの美術館の由来と特長、そこに収蔵された名画の歴史と画家の情熱を理解すれば、何をさしおいても行きたくなるような美術館ばかりです。絵画が好きな人にも、そうでない人にも、おススメしたい一冊です。