ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

クランⅤ 警視庁渋谷南署巡査 足ヶ瀬直助の覚醒 沢村鐡 中公文庫

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クランⅤ 警視庁渋谷南署巡査 足ヶ瀬直助の覚醒 沢村鐡 中公文庫
悔しいけど、最高のミステリー 

面白いエンターテイメントの条件って何だと思いますか?いろいろあるとは思いますが、「意外性」「観ている人を裏切る展開」は重要な要素の一つだと思っています。

そういう意味で「クラン」シリーズ最高です。読者を思いっきり揺さぶって、「ここまでついてこれるか!」と言わんばかりのストーリー展開が最高です。Ⅰ~Ⅴまで読んできましたが、いまだにどの登場人物を信じていいのかわかりません。誰が「クラン」側で、誰が「警察閥」側で「神」側なのかが、しょっちゅう裏切られます。このシリーズの重要な登場人物「神」のイメージが作れません。警察の内部抗争の壮大な物語のようにも読めるんですが、いつか警察の枠を超えてとんでもない展開をしそうな恐怖におののきながら読んでいます。そもそも「神」は最後まで「警察閥」側なのかも疑っています。悔しいから、何が起きても驚かないように、気持ちの準備をしっかりしながら読んでいます。

タイトルに裏切られるミステリー?

 タイトルは足ヶ瀬直助の覚醒になってますが、本作ではまだ覚醒しきっていません。足ヶ瀬巡査の周辺も含めて、徐々に物語のメインになってきたぞ~という「来た!来た!」感はするんですが、このシリーズの展開から考えてこんなもんじゃなく、Ⅵでの「覚醒ぶり」が非常に楽しみです。タイトルについても、「次作へ繋げるためのタイトルなのか?自分は裏切られたのか?」と叫んでしまいそうで…でも気持ちよく裏切られたくて…沢村先生!お願いだからプ~タロウを思いっきり裏切ってくださ~い。

この作品が通常のミステリーと一味違うのは、「正義の味方 クラン」側の主要人物がこんなに大勢死んでしまうという点です。「悪の警察閥」側は後から後からいくらでも悪人が沸いてくれてもいいのですが、「正義の味方 クラン」の仲間になるにはよほどのハードルを超えて登場してくれないと納得できず、このままでは「正義の味方 クラン」は最後の一人になってしまうぞと要らぬ心配をしてしまいます。

展開が読めない!「神」は悪? いや、そこも裏切られるのか? 悔しいけどおススメです。

Ⅵ(完結編)を読み終わるまで、正義のクラン側と悪役「警察閥」側の闘いがどうなるか? 余談を許さない一品です。 中公文庫さん Ⅵはいつ出るの?早く読ませてください!