ミステリーとか警察ものとか…読んだら書評書いてます

ミステリー、警察もの、組織もの、たまに他の本も、実際に読んでから書評を書いています。川崎市在住 連絡先 oyamaiitenki@gmail.com

雨の狩人 上下 大沢在昌

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雨の狩人 上下 大沢在昌

さすが!大沢在昌様 ヒーロー像が渋い!

大沢在昌さんといえば、「新宿鮫」。シリーズの4作目くらいを何気なく手に取って読んでみたらハマりまくり、1作目からむさぼり読んだ記憶があります。鮫島警部は素敵な恋人までいる正統派ヒーローですが、この「雨の狩人」の佐江刑事は、カッコ悪い刑事の典型みたいに描かれています。登場の仕方がカッコ悪いよね。40過ぎ、腹はでっぷりと出ている、シャツやネクタイには食べこぼしの染み、煙草が吸えないと爪楊枝をくわえて、ってカッコ悪すぎだろう。でも、読み進んでいくうちに佐江刑事がどんどんカッコ良く思えていくんですよ。
組織の中で適当に生きることができない、相手が誰であろうと真っ当なことを貫く、しかも、しぶとい、ものすごくしぶとい!生き様がカッコイイ!どんなに中年太りのオヤジだろうとカッコイイものはカッコイイんですよね。
大沢さんの初期の作品はあまり好きではないのですが、「新宿鮫」以降の作品は大好きです。ちょっと冷めた雰囲気の描写で、現場の雰囲気がすごくよく伝わってくる文章は、何冊読んでも飽きません。
最近の警察小説では、笑えるキャラクターの刑事が出てくることも多いんですが、この「雨の狩人」では 息抜きできるシーンが無く、読者はず~っと緊張させられますよね。上下で800ページ以上もず~っと緊張しっぱなしは疲れましたが一気でした。
話の展開が上手いのか、読みながらぐいくい引き込まれていく圧倒的な力を感じました。
ただ一つ、最後まで延井が何を目論んでいるのか気になってしょうがなかったのですが、この作品の謎解きはちょっと普通で「な~んだ」でした。実は冒頭から、ひょっとしたら…って想像していたのですが、まさかな~と思いもっと意外な答えを期待していたのですが、期待を満足させてはもらえませんでした。
「新宿鮫」と同様、この作品も舞台は新宿、花見小路は知ってましたが、あの界隈に古い飲み屋がいっぱいあって、オレンヂタウンって言うなんて知りませんでした。今度のぞいてみよう。のぞいたらシャブ中の元ヤクザが死んでいたらどうしよう~。